2010.03.01 Monday
『あ・うん』
JUGEMテーマ:映画
1989年 降旗康男監督/向田邦子原作
たおやか、という言葉そのもののような、富司純子さん演じるたみの着物姿は
とりあえず、それだけでも観る価値アリ(もちろん、内容も十分面白いけれど)。
ほっそりとした身体をそぉっとくるみこむような、その着こなしは
着付けという言い方が、少々堅苦しく思えてしまうほど。
布と布の間、布と肌との間に柔らかな空気の層があり、その内側で
ふわりと身体がたゆたっている、そんな印象だ。
ゆったりと緩やかで、でも決して“崩れ”はしない。
あくまでも上品で、瑞々しく清潔な色気を漂わせながら
どこか初々しさも残しつつ…なんとも魅力的な大人の女性。
(たみのチャーミングな仕草に、そうそう、そこ、かゆいときあるよね、と
思わず頷いてしまったり。笑)
女の和服は鯱鉾張りさえしなければそれでいい。雪だと思って着ればいい。
講釈も文句もなんにもいらない、ふわりと着ればいい
和服をきるのには、上前下前をかき合わせて着ます。
あれは自分を大事にしていとおしむ形だと思います。
−「幸田文 きもの帖」(平凡社)
………まさに。
庭先で伸子張りをする、姉さん被りのたみ。
後ろ姿の、背中(お太鼓の上)のわずかな皺。
袂にこぼれる、ひとすじの紅。
舞台は昭和12年。
着物が日常着だった頃の、澄ましかえっていない自然な着物姿が息づいていました。
ちなみに、私のイチ押しは。
最後の方にちょこっと登場する、故三木のり平さん。
さすが! いい味出してます(笑)。