九九夜話

日々のこと。

日々のこと。|九九夜話
着物スタイリスト秋月洋子の活動記録。オリジナルデザインによる帯留ブランド『九九』‐銀細工職人、山口緩奈さんとのコラボレーション‐の紹介と販売。季節に合わせたスタイリングや趣味の書(古代文字:龜甲会)の話もたまに。
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『おとうと』
JUGEMテーマ:映画



1960年 市川昆監督/幸田文原作
(最近公開の同名作ではなくて申し訳ないのですが)



幸田文さんの自伝的小説を原作とした作品。

原作に、かなり忠実に映像化されてはいますが、さすがに1時間半という短さでは
この世界感を詳細な背景まで理解させるには難しいかと。。。

なので、小説を読んでから観るのがオススメです。




継母との気持ちの行き違いや、弟碧郎の繊細で壊れやすい心、
姉げんの(弟を思いながらも)ただ労働力としてのみ認識されていることに
「私はいったい何?」というやるせない気持ち……
限りない愛情を持ちながら、それを示すのが下手な父の姿も、また哀しい。

みぞおちのあたりが、きゅうっと引き絞られるような切なさが行間にあふれていて。
原作を読んでから観ると、岸恵子さん演じるげんの表情の背景にある
感情も、より深く伝わってきます。





時は大正時代、女学生であるげんは銘仙に袴。
弟碧郎は、学生服、あるいは白絣に袴、学生帽。

この頃の、一般的な家庭における日常着がたくさん見られます。
決して裕福ではない、ごくごく一般的な水準(経済的に)の家庭環境。
これは、母の友人として訪ねてくる夫人が、いわゆる「いいうちの奥様」として
描かれていることからもわかります。明らかに身なりの華やかさが違って、対照的。
(若き日の岸田今日子さんが、これまたいい味出してるんですねー。笑)



着物は、薄茶と弁柄色の地に墨色の格子の銘仙。
ねずみ色の兵児帯を締め、1尺7寸くらいありそうな長い袂に
がしがしとたすきをかけて家事をするげん。
(この勢いが、なんともげん=幸田文さんっぽくて…印象的)


     袂の長さはともかく、この雰囲気は現代でも十分素敵。
     役としての設定は19〜20歳くらいなのですが、演じている岸さんは20代後半。
     なので、雰囲気としては結構大人っぽい。
     20代30代でも、普段着に兵児帯、のお手本としてかなり参考になると思います。



外出の際には、帯を更紗っぽい半幅帯に替え、大きなやの字(お太鼓風)に。


     中幅や半幅の帯を、この大きなやの字に締めた後ろ姿がよく登場しますが
     この結び方、現代でもウールや木綿の着物にとてもよく似合うと思います。
     帯揚げと帯締めをして、適度なきちんと感もあり、かなり大きめなので
     ヒップラインもしっかりカバーしてくれる。

     ただ…このバランスは、この袂の長さがあってこそ、という感じもしますね。
     現代の袖丈(1尺3寸)なら、もう少し小ぶりの方がバランス良いかもしれません。



また、こげ茶色に撫子や菊などが織りだされた銘仙(大島?)に
青磁色に南天っぽい葉と実の柄の羽織を合せた外出のスタイル。

うちに帰れば、薄い小豆色の麻の葉柄の上っ張りを着て。
着物+羽織の配色のお手本といったところ。



その他にも、当時のデパートの雰囲気や、上布らしき白の着物にカンカン帽、といった
男性の姿(当時はおしゃれをして出かける場所だっただろうから)。
炭を入れて使うアイロンで、霧を吹きながらアイロンがけをするシーン。
弟に見せるために日本髪を結うシーン…などなど、見どころがたくさんあります。



     ついでに言うと、看護婦さんのスタイルがまた何ともかわいいのです。
     江波杏子さんの、小悪魔風な美貌と相まって…これまた必見。

     あと…ガチョウも。ある意味、いちばんの見どころかも(笑)。




              


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