九九夜話

日々のこと。

日々のこと。|九九夜話
着物スタイリスト秋月洋子の活動記録。オリジナルデザインによる帯留ブランド『九九』‐銀細工職人、山口緩奈さんとのコラボレーション‐の紹介と販売。季節に合わせたスタイリングや趣味の書(古代文字:龜甲会)の話もたまに。
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装いは語る
時代小説において、装いは、登場人物の
身の上や心情を物語る重要なファクターとなる。

髪型や化粧、着物など、その装いによって
その人物の立場や背景がほぼ見て取れた時代の物語だから
当然と言えば当然なのだけど。





久し振りに『芝桜』(有吉佐和子著)を読み返す。

まったく正反対の性格を持つ二人の芸者
正子と蔦代の人生を描いた物語。











畳んだ着物が描かれた、文庫本のカバーからも
うかがえるように、殊に、花柳界を主な舞台とする
本作において、装いはとても重要な意味を持つ。
登場人物の性格や立場を、それぞれの装いに対する
思いや扱い方を細やかに描写することで
表現しているといってもよいほど。

また、時代は大正〜戦後………女性の装いに
最も大きな変化があった時代だから、なおさらだ。



芸者時代、役者である恋人の紋や干支の模様を散らした
小紋に帯、襦袢、そしてお正月には、名前にちなんだ裾模様を
染めさせて……と贅を尽くして装いに凝る、主人公の正子。
(関係が終わった後、その始末に困り果てますが笑)



芸者をやめ、堅気の商売を始めた正子の、その立場による装いの変化。

戦前から戦後にかけての、時代による装いの変化。



着物にまつわる、数々の印象的なエピソードを織り交ぜながら
正子と蔦代のまったく正反対の(…なのに、複雑に絡み合った)
生き方が描かれていく。







しかし、なんというか……
この著者の描く“女”というのは
ただもう、見事、としか言いようがない。
他の作品にも、この手の人物が登場するけれど
読みながら、真剣に腹が立ってくるほど(笑)。

なのについ、一気に読み進んでしまうのだから
正直、読んだあと、どっと疲れが。。。。



正子とともに、ものすごく重い何かを、ようやく
振り棄てたような………開放感に似た思いも感じつつ。




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